Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こどうひゃくわ

胡堂百話

野村 胡堂

Lisez 胡堂百話 (こどうひゃくわ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 124 386 caractères · 248 écrans

Aozora Bunko

まだ、素人ノド自慢などという番組はなかったが、地方のウグイス芸妓なんぞが、何かの拍子に発見されて、一躍、人気歌手になったりすると、玉の輿ほど、さわがれていたものである。その日もバスの車掌に向って、

「キミはいい声だね」

と、最初に誰かが無責任な口をきいた。

「これはモノになるかも知れない。唄ってみたまえ。テストしてあげよう」

すぐに、もう一人が尻馬にのった。

別に名刺を出した覚えはないが、われわれが、どんな人種であるか、大体の見当はついていたのであろう。女車掌は、ちょっと、はにかんでみせたが、決然として面をあげると、なかなかの美声で唄い出した。

「ほほう。相当なもんだ」

「声量もあるね」

どうせ、退屈しのぎである。悪童連中、いい加減な相の手を入れていると、そうとは知らぬ女車掌は、本当に決死の形相である。山を越え、森を越え、熱海へ着くまで、八里の道を、唄って唄って、唄い通した。

唄が何だったかは忘れたが、あの純真な車掌さんは、今にもレコード会社から迎えが来るかと、幾夜、眠らずに待ったことだろう。悪童たちの気まぐれとは知らず、ことによると、今でも待ちつづけているのかも知れない。