Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

Lisez あさひの鎧 (あさひのよろい) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 239 520 caractères · 475 écrans

Aozora Bunko

「おれもたん!」

と範覚は呻いた。

汗が胸から鳩尾の辺まで流れた。

「オレ死にそうだ! ……どうしたって死ぬ!」

彼の顫えはひどいものになった。

「眼が廻る! ……動悸がする! オレ死にそうだ、どうも変だ! ……血が頭に流れる! ……アッ、アッ、き気を催して来た」

金剛杖へ縋りつき、倒れまい倒れまいと努力しながら、なおも彼は女の姿を追った。

「オレ、ほんとうにせつないくらいだ! ……二十一日間断っていた俺だ! ……女をよ、断っていた俺だ! ……その俺にだ……あんまりひどいや! ……拷問だ――ッ、助けてくれ――ッ」

その時女は絞った髪をパ――ッと背後へ両手で払った。

黒い翼が背で羽搏き、女天使の白光体は、その瞬間にふくらむように見えた。

範覚の体は大きく揺れた。

口から泡が吹き出した。

「助けてくんな! ……タ、助けて!」

金剛杖がボタンと仆れ、つづいて範覚の大きな体が、洞の入り口へあおのけに倒れた。

気の毒に気絶したのであった。

この日もやがて夜となった。

晴れた夜空には天の河が、水銀のように流れていた。

同じ比叡山の裏山の、山の斜面に瘤のように、はみ出している丘の上に、沢山の樹木に囲まれながら、一宇のお館が建っていた。