Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lisez 剣難女難 (けんなんじょなん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 243 807 caractères · 482 écrans

Aozora Bunko

「はて?」

新九郎が不審そうに、小首を傾げると、御方は指さして、また悩ましいまで媚に満ちて笑いこぼされる。

「あんな、誠しやかなお顔をして、これを知らぬという筈がありましょうかえ、春日さま、お前様は、嵐の夜の前に、首尾の松の下で摺れ違った船から、阿娜な女に、この扇を投げられたのではありませぬか。それが風の加減で、妾の船へ落ちてきたもの……遠くも隔たっておらなかったので、妾はその時の態をありありと見ていましたのじゃ。そして、心憎い首尾をする恋仲よとも思いましたぞえ」

「もっての他」

新九郎は慌てて打ち消しながら、あの宵に、チラと見たお延の姿をやっと憶い出した。

「夢にも、恋仲などという女ではござらぬ」

「ホホホホ。仰っしゃる忙しさは、よう妾に読めております。その女子に逢いたいため、早くこの寮から逃げたいお心……」

「何としてそのようにお弄り遊ばされる。新九郎近頃もって迷惑つかまつります。逃げたいなどという所存は」

「ないと仰せ遊ばしますか」

「…………」

「春日様。いいえ、もうお前様とは格別お親しゅう思っている妾、新九郎さまと呼んでもおかしゅうござりますまい。新九郎様」