Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lisez 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) de 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 113 247 caractères · 229 écrans

Aozora Bunko

俺は必要のない人のものを奪って、必要のある人に融通しているに過ぎんのだ。

ステッキをとってながめる。

それにしても、このステッキの簡単な仕掛けに気がつかんとは、世間の奴らも案外甘いもんだ。

ステッキの空洞の中へ、宝石類を入れながら、

俺が、この中へはいる程度の小さいものにしか、手を出さぬというところへ眼をつける者が、一人や二人あってもよさそうなものだ。

卓子の上からおかめの面をとり上げる。

だが不思議なことには、俺がこの面をこうつけて

面をつける

このピストルをもって、

ピストルをとりあげる

物陰から風のように現れると

起ち上がる

亜細亜新聞記者東山一雄という俺の人格はすっかり消えてなくなって、仮面強盗という、正体のない、別個の人格が忽然と生まれてくるのだ。名は実の賓なりと言うが、この面をつけて、ピストルをもつだけで、この頃では、俺の心の中までもがらりと一変して、別の人間になるような気がする。ただの、世間普通の新聞記者としての俺はこのマスクをかぶると、煙のように消えてしまって、金と金持ちとを憎む権化になるような気がする。

この時扉の外で叩音が聞こえる。彼はどきっとして、あわてて仮面をぬいで、ピストルとともに卓子の抽斗へしまう。