Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 197 228 caractères · 394 écrans

Aozora Bunko

空には、昼間の月が、うッすらと浮いていたし、地には昼顔の花が、這っていた。

「新左。彦右衛門。……よい機だぞ。今だぞ」

紀伊守の嫡子、天野元明は、十頭ばかりの馬が繋いである木立の蔭から、小声で――しかし急な烈しい声で――誰かを急きたてていた。

鹿之介は何も気づかなかった。

妻子一族をのせた渡舟はいま、川の中ほどまですすんでいる――

胸に、川風を入れながら、眼はそれに、見惚れていた。

涙があった。彼のひとみに。

「……不愍な」

と、ふと漂泊の家族に、あす知れぬそれらの者の運命に、親として、良人として、主人として、断腸の感を抱いていたのであるまいか。

虫が啼きぬいている。

淡い昼間の月も、昼顔の花も、炎天の下ながら、なんとなく、もののあわれを人に誘う。

剛者は情に脆いという。

多感多血、人いちばい、鹿之介には、濃いものがある。持って生れた義胆と侠骨は、いまもなお、ひとみの底に、大夏の太陽よりも強烈なものをもって、燃えている。

信長には捨てられた。

秀吉とは手を別った。

そして上月城は敵手に委ね、残る唯一なるもの――すなわち主君尼子勝久の首級まで、敵に捧げてしまった。