Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

橋の上の女 ――銭形平次傑作選2

野村 胡堂

Lisez 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 573 caractères · 178 écrans

Aozora Bunko

その一角、ちょうどお夢の寝ていたあたりの上には、畳二枚ほどの空所があり、そこには火鉢も置き茶道具も備えて、舞台から疲れて入っては、湯も茶も呑めるようになって居るのでした。

尤も火鉢を転がし落したあたりは、ろくな境もなく、幕一枚垂れただけですから、ここから簡単な手摺の下を滑らせさえすれば、火鉢はまさに下に寝ている者の上へ落ちるわけです。その落した大火鉢というのは、唐銅の恐しく重そうな獅噛み火鉢で、少し濡れた灰を戻して性懲もなく、もとの場所に据えてありました。

「ここには何時も人は居ないのか」

「夜は滅多に参りませんが、昨夜はまだはねたばかりで、火鉢もそのままになって居たことでしょう」

小左衛門は要領よく答えます。

「その火を毎晩片付けるのは誰の役目だ」

「与三郎か金太でございます」

「お鈴はその時どこに居たというのだ」

「この隣は衣裳部屋になっております。そこで舞台衣裳を片付けていたそうで、あの娘はまことに物事に几帳面な性で、ヘエ」

「舞合の方へ行って見ようか」

書き割から道具類から、あらゆるガラクタを縫って舞台へ出ると、頭の上にはお鈴が得意の芸をする太い綱が客席の上へかけて、三間ほど上を走っており、舞台も客席も空っぽで、昼近いのに人の影もありません。