Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lisez 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 198 400 caractères · 387 écrans
と私もあまりいい気持はしませんのですが、初めて顔を合せた家内の手前、弱身を見せるわけにもゆかなかったものですから、起きて床の間のあたり、屏風の廻りなぞをくまなく調べてみましたが別段に変ったこともございません。ただそこには薄暗い洋灯に照らされて、家内の脱ぎ棄てた衣裳が衣桁から深い襞を作っているばかりでございました。
「おおかた夢に魘されたのだろう?」
「でもわたし、宵の口からまだ少しも眠ってはいませんでしたもん」
と家内は恥ずかしそうに顔を赧らめました。そしてまだ気味悪そうに吻っと溜息を吐いているのでございます。
「それじゃ夢を見たわけでもないが」
と私は苦笑いいたしました。
「じゃきっとこの衣桁に掛かっている着物でも、灯の工合でお前さんにそう見えたんだよ……きっとそうだよ」
家内は不服そうに頭を振りましたが、なにせ、宵に初めて顔を合せたばかりのことですから、家内も私もまだ他人行儀で、そう親しく口をきき合っていたわけではありません。万事が遠慮がちな時ですから、恐ろしそうに震えながらも家内もそれ以上はもう言いませんでした。
血塗れになった美しい奥さんが真っ蒼な顔をして立っていたと言えば、ずっと以前、去年の秋の暮れ、あの土砂降りの雨の晩に大戸を叩いて阿母と話をしていった女の人というのと寸分も変りのない姿でございます