Classiques japonais avec furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lisez 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 198 400 caractères · 387 écrans
「うむ、いまあいつを追ったときに、そこでつまずいたから、茨ででもひっかいたんだろう」
と夫人に心配させぬよう、さりげなくいいすてて、博士は診察室へはいっていかれました。
夫人から注意されるまでもなく、さっき老婆から爪でもたてられたとみえて、手の甲がヒリヒリとかなり痛んでいたのです。
手ばやく消毒して、さて傷口をあらためてみて、かなりそのふかいのにおどろきました。
一筋……二筋……三筋……するどい爪でひきさかれたとみえて、あらってもあらっても、ポタリポタリと、血がしたたりおちてくるのです。しかもながめればながめるほど、これが人間からうけた傷あとか? とうたがわれんばかりの、深いふかい傷……。
「ウム……ふしぎだな!……」
と博士は、小首をかしげました。
どう考えてみても、人間には、これほどまでにあいてに深い傷をおわせるするどい爪は、生えていないはずなのです。ハテナ? と思ったとたん、ふと頭にうかんできたものがありました。
あの犬の五郎丸の死因になった爪傷、どうしても腑におちなかったあの爪傷が、ちょうど、いまじぶんの手の爪傷とまったくおなじだったのです。