Classici giapponesi con furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Leggi あらくれ di 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 119.451 caratteri · 236 schermate
お島は独りでそれを考えていた。
「何等かの運を自分の手で切拓くまでは、植源や鶴さんや、以前の都ての知合にも顔を合したくない」と、お島はそうも思いつめた。
王子の停車場へついたのは、もう晩方であったが、お島は引摺られて行くような暗い心持で、やっぱり父親の迹へついて行った。静かな町にはもう明がついて、山国に居なれた彼女の目には、何を見ても潤いと懐かしみとがあるように感ぜられた。
父親が、温泉場で目っけて根ぐるみ新聞に包んで持って来た石楠花や、土地名物の羊羹などを提げて、家へ入って行ったとき、姉も自分の帰りを待うけてでもいたように、母親と一緒に茶の間にいた。もう三つになったその子供が歩き出しているのが、お島の目についた。
「へえ、暫く見ないまにもうこんなになったの」お島は無造作に挨拶をすますと、自分の傷ついた心の寄りつき場をでも見つけたように、いきなりその子供を膝に抱取った。
「寅坊、このおばちゃんを覚えているかい。お前を可愛がったおばちゃんだよ」
羊羹の片を持たされた子供は、直にお島に懐いた。
「何て色が黒くなったんだろう」姉はお島の山やけのした顔を眺めながら、可笑そうに言った。