Classici giapponesi con furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Leggi あらくれ di 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 119.451 caratteri · 236 schermate
お島は庭の井戸の水で、白粉のはげかかった顔を洗いなどしてから、裏の田圃道まで出て来たが、濛靄の深い木立際の農家の土間から、釜の下を焚きつける火の影が、ちょろちょろ見えたり、田圃へ出て行く人の寒そうな影が動いていたりした。じっとりした往来には、荷車の軋みが静かなあたりに響いていた。徹宵眠られなかったお島は、熱病患者のように熱った頬を快い暁の風に吹れながら、野良道を急いだ。酒くさい作の顔や、ごつごつした手足が、まだ頬や体に絡わりついているようで、気味がわるかった。
王子の町近く来た時分には、もう日が高く昇っていた。そこにも此処にも烟が立って、目覚めた町の物音が、ごやごやと聞えていた。
「今時分はみんな起きて騒いでるだろうよ」お島はそう思いながら、町垠にある姉の家の裏口の方へ近寄っていった。
山茶花などの枝葉の生茂った井戸端で、子供を負いながら襁褓をすすいでいる姉の姿が、垣根のうちに見られた。花畠の方で、手桶から柄杓で水を汲んでは植木に水をくれているのは、以前生家の方にいた姉の婿であった。水入らずで、二人で恁して働いている姉夫婦の貧しい生活が、今朝のお島の混乱した頭脳には可羨しく思われぬでもなかった。