Classici giapponesi con furigana
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こころ
こころ
Leggi こころ di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 160.915 caratteri · 322 schermate
父は自分の眼の前に薄暗く映る死の影を眺めながら、まだ遺言らしいものを口に出さなかった。
「今のうち何か聞いておく必要はないかな」と兄が私の顔を見た。
「そうだなあ」と私は答えた。私はこちらから進んでそんな事を持ち出すのも病人のために好し悪しだと考えていた。二人は決しかねてついに伯父に相談をかけた。伯父も首を傾けた。
「いいたい事があるのに、いわないで死ぬのも残念だろうし、といって、こっちから催促するのも悪いかも知れず」
話はとうとう愚図愚図になってしまった。そのうちに昏睡が来た。例の通り何も知らない母は、それをただの眠りと思い違えてかえって喜んだ。「まあああして楽に寝られれば、傍にいるものも助かります」といった。
父は時々眼を開けて、誰はどうしたなどと突然聞いた。その誰はつい先刻までそこに坐っていた人の名に限られていた。父の意識には暗い所と明るい所とできて、その明るい所だけが、闇を縫う白い糸のように、ある距離を置いて連続するようにみえた。母が昏睡状態を普通の眠りと取り違えたのも無理はなかった。
そのうち舌が段々縺れて来た。何かいい出しても尻が不明瞭に了るために、要領を得ないでしまう事が多くあった。