Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
「佐々さんでいらっしゃいますか」
「――電報?」
「ただいま受信いたしましたそうです」
「どうも有難う」
伸子は、直ぐそれを開き、立ったまま読んだ。「ハハアンザンアンシンアレ」――母安産安心あれ――。伸子は、自分の耳に、急に強く、空虚に、舞踏曲が響いて来るように感じた。二週間前にこれさえ来たのだったら! しかし、伸子は自分の感情を克服した。
母の顔を見るまで、伸子はその電報の打たれた日に、弟か妹かが生れたもの、と信じていたのであった。
やつれこそ見えるが、勿論母の様子は、一昨日新たな子を迎えた人ではなかった。そして、また、なぜ彼女は、伸子がそのためばかりに、弾んだ呼吸も聞えるだろう程せきこんで帰ってきたのに、ああ軽く、何気なく云い紛らしてしまったのだろう。伸子は家じゅうの空気に、急に帰って来た者を整わない準備で迎えるざわめきばかりを感じた。母には、何のために伸子が今頃帰ったか、解っているのだろうか。――
伸子は、膝の上に抱き上げていた妹を下した。彼女は、外に洩されない不満の吐息を深く内に吸いこみつつ云った。
「さあ――そろそろ着物着換えようかしら……」
彼女は立ち上り、外套にくるまったままでいる自分を見廻した。