Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
七
何処からか神経的なすすりなきが起った。カイゼルの藁人形は数千の顔の上でいよいよ愚かな身振りをした。第二の喊声が広場じゅうに轟いた。ぼーっと火の手の上るのが伸子に見えた。カイゼルの格子縞の襤褸を火が走った。機械オルガンは国歌を鳴らした。青い薄い煙が、初冬の午後の透明な、やや物懶い空に静かに昇った。微かにきなくさい匂いがあたりにただよった。
七
伸子は、何となく満ち足りない悲しささえ交った心持で、三時間ばかりののちホテルに帰った。
彼女は、広間で帰って来たばかりの佐々と落ち合った。彼の陽気さは、はたから苦情の云いようないほど天真であった。彼は、確かに三鞭酒の機嫌で声をかけた。
「どうしました! おかげでいい見物が出来て結構だったな。全く千載一遇の好機だ。これで御覧、もう一ヵ月もおくれて上陸しようものなら、こんな素晴らしい歴史的光景なんか一生見られなかったことになる。――機会だ。平野君のおかげですよ――」
佐々は感激ののこっている熱心な早口で、自分がある実業家倶楽部の昼餐の席で汽笛を聞いたときのことを話した。
「まあ総立ちという形だ。何しろ連合国の代表だと云うわけで急に祝辞を呈してくれるやら、日本のために乾盃してくれるやら、――悪くない気持でしたね。