Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
六
一
「――ただ楽しむためにだけ、来たんですか」
思わず眼が喰い合った。伸子は鈍い恐怖めいたものを心臓に感じた。
「どうして?――ちがうの?」
「私は、あなたの足のためにいいだろうと思ったから来たんです」
伸子は、自分達の間に危いながら燃えていた蝋燭の灯が、フッと吹き消されたような寂しい心持がした。
「それで、こないだも、大丸へよったりしちゃいけなかったの?」
佃は、しかし黙り込んで、それには答えなかった。
そのような感情の齟齬が、帰るまで、遂に彼らの間から消えなかった。七日いて、彼らは謂わば喧嘩別れのように、佃は東京へ、伸子はKへと、別々に立った。
佃の黒い制服の肩を窓から見せ、汽車が動いた。自分の乗っている汽車も動いて、互に反対の方へ行く。――伸子は、再び帰ることのないところへ向って動き出したような心持であった。
六
一
広い蚊帳の中で、寝ながら伸子は、ぽつり、ぽつり、母と話していた。あたりには、涼しい田舎の夏の闇があった。
「――だからこれで、夫婦なんていうものはむずかしいものさね……」
ゆっくりした多計代の声が、高い天井の方からのように響いた。
「性質が違いすぎてもいけないし、さりとて、勝気同士では丸く行かないのはあたりまえだし。