Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
「――さあ、まだ二時ぐらいなものだろう」
彼は、時計を出した。
「ほう、十分過ぎている……案外かかったね」
佐々は、人さし指を頁の間に挾んで持ったノオトで軽く外套にくるまれた膝を叩きながら窓外を眺めていたが、不意に伸子の方へ体を捩じ向け、低く情愛深くささやいた。
「――あまり亢奮しちゃあいけませんよ、人が見ているから……」
彼はもとの位置に体を戻しながら、やや高い声でつけ加えた。
「同情すべきさ、お前に上気せられては参るからね」
「いや……父様」
彼らは桜木町から俥に乗った。乱暴な港の俥夫は胸をのめらせ、支那の苦力のように叫びながら駆け出した。
コレア丸は丁度、岸壁に横づけになったばかりであった。
ガングボードをとりつけるところで、コレア丸から乗り出した水夫が大声で合図を叫ぶ。それに答えつつ、数人の男が石畳の上で、車輪付階段を押している。それを待ち切れず、感動的な、せっかちな、傍の思惑などかまっていない求め合いの混雑が、そこ、ここで起っていた。伸子は父の腕を執り、どんどん人波を分けて進んだ。眼では絶えず上甲板の欄干にそうてびっしりと並んだ顔の列の中に、佃を見出そうとしながら。