Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
彼は、在米中知り合った人々に就職口の紹介を頼んだ。そのための訪問になど、彼は安心して伸子の部屋に納っている気にもなれず、毎日昼間は外出した。夕方、佐々と前後して帰宅した。劇務に追われて一日を過した老齢の佐々より、佃の方が、疲れた疲れたと訴えた。伸子は、それを侘しく感じた。
夕飯後、彼はしばらくは一座に連なる。が、しばらくすると、きっと、
「私は失礼します――少ししなければならないことがありますから……」
と断って、独り土蔵前の部屋に引取った。佐々の家で、規則立った勉強をするのは勿論楽ではなかった。主人が読書家でなかったから、夕飯後から眠るまでの時間、家庭の内には陽気な混雑があるばかりであった。佃の、皆にまじって遊んでいられない心持、それは伸子に理解された。けれども彼はどうしてか毎晩、黙って立って行ってもよさそうなのに、きっと、ぎごちなく、
「私は失礼します」
と切口上で述べた。それはまるで、自分だけは、これでも重大なことを控えているのだ、と宣言するようであった。彼が一人、皆に背を向けて扉をガラガラと開け、出て、閉め終るまで、呑気に喋くっていた連中は、何だか咎められたような重苦しさを感じ、一寸黙りこむ。