Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate

Aozora Bunko

――

佃にも、いろいろ理窟があるので、彼らは数度、重苦しい沈黙におちいった。一区切すんだ時、伸子はほっとして云った。

「ああ、やっとすんだ! 頑張りの寄り合だから大変だ」

彼女は、手をのばして、赤インクの栓をした。

「さ、ちょっと息ぬきに喋らない?」

「しゃべってもいいが――動坂で十分楽しんで来たでしょう」

「楽しんでなんか来やしないわ、別に。あなたとほかの者とは違うじゃあないの――何か珍しいこと無かった?」

「さあ……。じゃあこうしよう」

佃は、いい思いつきだというように云った。

「どうせ、喋っているんなら、喋りながらこれをつけましょう、ね?……頭を使うことでもないからいいでしょう?」

彼は、机の上から、下積みの茶表紙の小帳面を引き出した。伸子は、それを見るとふざけたように、

「ふあ――」

と、閉口した。

「閻魔帳?」

伸子は、冗談の下に本心を現して云った。

「楽しみたい、ああよし、小遣帳――洒落にもならないわね」

佃は、落着いて小遣帳に日づけを記入しながら、じぶくる伸子に教訓するように云った。

「何年もあとで見ると、その頃の生活が分って面白いものになりますよ。今日は――と、パン十五銭……多賀君の送別会費三円。