Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
それ故この滞在は、なお心軽やかであった。祖母の箪笥のひきだしに、古い風月の菓子箱があった。昔の写真がしまってあった。伸子の、生れて百日目というのだの、少し大きくなって、和一郎が天鵞絨の水兵帽をかぶって乳母に支えられている横に、伸子が姉らしく澄して立っているのだの。祖母は、ほくほくして、今は大きくなった彼らに見せた。
「おや、こんなのがあったかしら……この時分じゃなくて、ほらよく人攫いが来るって、こわがったの。――吉さんを送って行ったかえり、坂の角から、あなたをおんぶして、夢中で家まで駈けて帰ったことがあったじゃないの」
「本当ね、滑稽だな。だがあの時は本気でこわかった、姉さん、まるで一生懸命なんだもの」
「今度は、和一郎が姉さんをおんぶしてやらにゃなるまい」
「――こんなでかいの? 参っちゃうなあ」
「ハハハハ」
祖母がいないと、彼らはもっと打明け話をした。和一郎は、恋愛模索時代であった。憧憬、不安、熱情が、時々激しく彼の精神を揺ぶるらしかった。彼は、自分の細かい心理状態や、予備校の学生仲間にある、特殊な、彼自身の趣味とは全然合わない恋愛病的雰囲気などについて、信頼に満ちた穏やかさと、若々しい正直さとをもって話した。