Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
伸子は、音を立てないように玄関へ上り、外からの薄明りでコートを脱いだ。さっと一条、右手の襖の隙から光がさした。佃が目を醒したらしい。伸子は、そろりと後手で、襖をしめ、夜具の裾を廻って夫の枕のそばに坐った。ささやき声で、
「ただ今」
佃は、一眠り熟睡した挙句の、暖かそうな頬の色を枕に横えていた。
「おかえり……どうだった?」
「――あなた明日おいそがしい?」
「なぜです」
「動坂ね、私の考えた通りの意見なの。あの電話だけでは、押しつけられるようで厭だって云う――折角お父さんをお呼びするんなら、その前に一度あなたに会って、さっぱりして置きたいって云うわけなの――あなた明日一寸いらっしゃらない? 私と」
佃は低く、傷けられたように、
「私にあやまれとおっしゃるんですか」
と、上瞼を釣らすようにして伸子を視上げた。老人を起すまいと、顔を苦しいくらい下げて、小さい声を出している伸子は、力一杯頭を振り、眉を顰めた。
「違うわ、あやまれなんて云うんじゃないのよ、ただ会って口を利いて、お互に――まあ、さっぱりしようって云うだけなのよ。その方が自然だわ、実際。喧嘩別れみたいにして半年以上いたのに、いきなり顔を合せたんじゃ、あなただって自然に喋れないでしょう」