Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
伸子は夫の耳に唇をつけて囁いた。
「あなたの心持、あっちだって解っているのよ」
佃は、白い枕の上に仰向き、黙って天井を見ていたが、やがて上を向いたまま唇も動かさず云った。
「そうすれば君が幸福になると云うんなら、行きますよ、私は何でもする」
伸子は、喉へものを閊えさせたような表情になって、夫の仰向いた顔を見下した。苦しき昏迷が彼女を襲った。佃は、何と変な癖、或は考えかたをするのであろう。一昨年の夏、動坂にいた頃、彼を養子にするとか、しないとか、ひどく揉めたことがあった。あの時も、佃の返事は、伸子に対しても、伸子の両親に対しても、その「私は何でもする、伸子の幸福になることなら何でもします」一点張りであった。伸子はそれをどんなにか苦しんだ。
「ね、あなたのそんな態度、ちっともすべてをよくしてやしないのよ。私の幸福は、あなたが勇ましく拒絶して下さることよ」
彼は、それに対して、
「ああ、そんなに泣かないで下さい、私はこんなに君を愛しているのだから、伸子! 伸子!」
一晩じゅう愛を誓い、伸子を撫で、しかし、彼は決して、明朝直ぐ両親に確答を与えることはしなかった。