Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
ふと伸子は寂しそうに呟いた。
「私も、父様と一緒に行っちまおうかしら」
「Kへか? しかし私の方はまだこれでなかなかいつ行けるかわからんよ」
伸子は、赤坂へ帰るのが、どうもいやであった。部屋部屋の様子や、その裡でまた繰り返される日常生活を想うと、圧せられるような気がした。自分を放さない鉄の機械の間へ、挾まりに戻るようにさえ思われた。佃の着く朝は病院へ行く日なので、伸子は赤坂に戻らないことにきめた。佃は、信州の方を廻って十時過上野に着く予定なのであった。
「こうおし、じゃあ。鈴木がどうせ暇だから、停車場まで迎えに出して、こちらへ来て貰うようにすればいい。夕飯を皆でたべてから、後はお前達二人の都合にすればよかろう」
例刻に病院から帰ると、玄関の沓脱石に、黒革の半靴が、きっちり揃えてあった。伸子には、この艶々した黒靴が、妙に人格を持っているように感じられた。伸子は、感情をもって、自分の草履をその傍に脱いだ。
「おかえり遊ばせ。――佃さんがおいででございます」
客間へまっすぐ行った。佃はそこにいず、食事部屋の出窓に腰かけていた。上着をぬぎ、カラアをとったワイシャツの姿で、さかんに扇風機に当っていた。