Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
九
「しかし――もう行っていいですか、病院はやめていいかどうか」
伸子は、それで中止されては大変という勢いでさえぎった。
「もちろん大丈夫よ。でも、明日念のためによく伺ってくるわ。――大丈夫にきまっているから行きましょうよ、ね、やめないでね」
九
正面には清澄な空気をつんざいて、噴火山が濃い小豆色に聳え立っていた。頂の煙が、揺がず立ち昇っている。煙草畑、矮樹林、そうかと思うと、また煙草畑。勾配が急になるにつれ、左右に青木ヶ原の爽快な地平線の眺めが、数十里の彼方まで拡がった。伸子らの自動車は、底力のこもった爆音をたてながら、ひた押しに登って行く。午前五時の露っぽい空気を裂いて疾走するので、太陽は上っているが、伸子の頬や唇がひやひやで、強ばるようであった。
橋を一つ渡る。くの字形に崖に挾まれた急坂を登りきると、行手に古風な温泉町が現れた。坂沿いの両側に、宿屋と土産物を売る店とが軒を連ねていた。道の真中に白く湯気の立つ溝があり、高く湯の香があたりに漂っていた。自動車が軒下をすれすれに通り過ぎる、どの宿屋でも、もう寝ている客など一人も無く、活気づいていた。からりと明け放した手摺に浴衣を干して、部屋にはいっぱい朝日がさしこんでいるところ。