Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
たださえ満員の高架電車は、下街へ近づく一停留場ごとにおびただしい乗客を詰め込んだ。
「や、どうだ、この押しようは!」
「グウィー」
乗客の中で、豚の悲鳴を誰かが真似た。ドッと笑声。
「失礼ですが、貴方日本の方ですか」
揉まれて落ちそうになる中折帽の庇に指をかけて平野に声をかけた皺だらけの老人があった。
「そうです」
「エヘン」
老人は亢奮のあまり頻りに咳払いをし、弱々しく震える細い声を強いて張りながら云った。
「実に今度の平和克服は、エヘン、我々連合国国民として御同慶に堪えませんな」
平野は微笑しながら、
「いや実際何よりです。何しろ随分待ったあげくですからな」
と答えた。老人はそれを聞いてさも満足そうに頷き、なおも咳払いをつづけた。
お祭り騒ぎの高架電車はレクタア街まで行った。踏み躙られた号外で足元も見えないステイションの鉄階子を降りて街上に出ると、伸子は混乱に圧倒され、しっかり平野の腕につかまった。巨大な煤けた事務所建築が、劇務にひしゃげた鉄籠のように左右に迫ってきっ立っている。数千の窓々が、一時に開いた心臓のように往来に向って開けっ放しになっている。それだけでも既に稀有な観ものだ。