Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
あながち伸子に限ったことではないのよ。伸子だから、というのでは決してないわ――……」
噛みつくように伸子を睨まえ、佃は、
「じゃ、どうしてもいやだというんですね」
と念を押した。伸子は、こっくりと合点した。
「どうしても?」
「――ええ。――どうしても……」
「それでいい! その返事が聞きたかったのだ!」
猛々しく彼は立ち上った。そして、机の上から紙とペンをとって来た。
「さあ、すっかりきまったから荷物の覚え書を作りましょう」
白い書簡箋の中央に横線をひき、上にT、下にNと頭字を書いた。
「それではと、――机――いるでしょう? 椅子は僕も気の毒だが三脚だけ貰って置きます。それから箪笥と」
佃は真蒼であった。頬がげっそりこけて見えた。ペンを持つ人差指に気味悪いほど力を入れ、書くのを、伸子は放心したように見守った。荷物を分ける……荷物を引きとる……心が破れたのに荷物がのこる……何と醜いいやな引き次ぎであろう。伸子は浅間しく、この瞬間それら家具類が一どきに消えて無くなればよい、恥知らず! と思った。
「ね、書かないだってよくってよ、私何にもいらないわ。――本と焼物だけあれば……」