Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

Leggi 光は影を (ひかりはかげを) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.262 caratteri · 276 schermate

Aozora Bunko

いゝえ、今は、そういうことが言えるんです。僕は、これで引きあげます。安心して、引きあげます。万一のことがあつたら、じかに僕のところへ知らせてください」

彼が二三歩、歩きだした時、看護婦は、ベッドからの合図にこたえるように、

「はい、はい、たゞいま……」

と、そつちへ急いで駈け寄る気配がした。

それから一週間は、またゝくうちに過ぎた。

百瀬しのぶは、彼が病院に小萩を見舞つたことを知ると、眼を丸くして驚いた風をし、

「それでもう、わたしの役目はすんだみたいなもんですわね」

と、言つた。戯談にしても、なにか冷たいものをふくんでいた。彼はちよつとそれがいやであつたが、この年頃の娘に、そう周到な心のくばり方を要求するのは無理であろうと考え、

「そうさ、君をそのためにわずらわす必要はなくなつたよ。しかし、君が、小萩さんの役に立つことは、まだ残つてやしないか?」

すると、彼女は、ちよつと首をかしげて、

「わたし、自分のことで、いま頭がいつぱいだから……」

と、言い放つた。彼は、それには二の句がつげなかつた。

そう言えば、ある日の夕方、家へ帰ると、上の妹の多津がぷりぷりひとりで怒つている。