Classici giapponesi con furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Leggi 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) di 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 346.393 caratteri · 692 schermate
五十二
お銀はその時、はっきりその男をそれと指ざすほど笹村に狎れていなかった。その晩はしょぼしょぼ雨が降っていたが、男は低い下駄をはいて、洋傘をさしながら、びしょびしょ濡れていた。
「あれがそうですよ。お銀って、私の名を呼びましたわ。」
「へえ。」
「あの時あなたがいなかったら、私はどうかされていたかも知れないわ。それは乱暴な奴なんです。酒さえ飲まなければ、不断はごく気が小さいんですけれどね。」
その家のことについて、新しい事実がまたお銀の口から話し出された。
「……私行った時から厭で厭で、どうしても一緒にいる気はしなかった。日が暮れると、裏へ出てぼんやりしていましたよ。裏は淋しい田圃に、蛙が鳴いてるでしょう。その厭な心持といったら……私泣いていたわ。そして何かといっちゃ、汽車に乗って逃げて来たの。」
「その家を、僕は一度たずねてやる。」
笹村は揶揄半分に言った。
「そしてお前のここにいることを知らしてやろう。」
五十二
けれどそんなベッドの新しみは、長く続かなかった。枕紙に染みついた女の髪の匂いの胸を塞らす時がじきに来た。笹村が渇えていた本を枕元で拡げるようになると、開放された女も長四畳の方で、のびのびと手足を延ばして寝るのを淋しがらなくなった。