Classici giapponesi con furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Leggi 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 209.260 caratteri · 418 schermate
恋すちょう……
一
恋すちょう……
一
二月の風は水洟をそそる。この地方はまだ春も浅い。ひろい畑は吹きさらしている。
昼まになっても、日かげの霜ばしらは、棘々とたったままだし、遠山のひだには、まだある雪が薙刀のように光っていた。
「麦踏め、麦踏め。――芽をふめ、芽をふめ、芽をふめ」
畑のなかで独り言が聞える。寒さと風に対抗しながら、それはだんだん大声となった。麦畑で、麦を踏んでいる老人の唇からである。
むこうの方でも、ふたり程、鍬をもって麦の畝をすいていた。
「老公か。……あのお声は」
ひとりがひとりへふり向くと、鍬の手をやすめ合って、
「はははは。そうらしいな。寒さを克服なさるため、足拍子にあわせて、書物のうちのお好きな辞句でも、吟誦していらっしゃるのであろう」
「いや。……」と、ひとりは耳たぶへ手をあてがいながら、
「麦ふめ麦ふめ。芽をふめ芽をふめ。と聞えるが」
するとすぐそれは聞えなくなって、彼方にいる老百姓が、麦踏みをやめてしまい、こっちを見ているふうである。胸にまでかかりそうな白い髯が、風のなかに著しく光って見える。
「おううい」
やがて聞えてくる声に、ふたりはあわてて鍬の柄を持ちかえ、