Classici giapponesi con furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Leggi 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 209.260 caratteri · 418 schermate
十六
大勢のなかに、かれの顔ひとつが、際だって蒼白だった。
その朝、あらかじめ内意を仰いだことはもちろんであろうが、将軍以外、柳営の人々にとっても、老公の登城にはみな唐突な感じをうけたらしい。
致仕したひととはいえ三家の長者、前副将軍黄門である。閣老や側衆たりとも甚だしくあつかい難いのである。ことに春雷一震のような畏怖をおぼえたのは大奥の女人国だったにちがいない。
将軍綱吉とても、多分に心を震撼されたここちであった。腫れ物にさわるような鄭重さが、この一隠居と将軍家との対面に無言の気づかいを終始くばっていた。――が、そのうちに、さほどでもない光圀の、ここへ来ても百姓然たる洒落な風にようやく親しみ出すと、初めて君臣眉をひらいて、やがて、善尽し美尽した饗応をもって、光圀を歓待しようとした。
「忝うはあるが……」
と、光圀は一応謝して、
「そのまえに上様へこの田爺からおみやげを献じたい。何ご不自由もない柳営へ持ち参らするような産物は水戸にもない。そこでこの田爺が持つものしか差上げられぬわけじゃが、ついては、上様をご案内して、学問所までお運びをねがわしい」
と、いった。