Classici giapponesi con furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Leggi 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.213 caratteri · 325 schermate
「すぐにだ!」
各、そのままの姿で、ばらばらと別れて江之島神社の裏をとり巻いた。――見ると、今起きたらしい郁次郎は、裏崖の下の清水をためてある石井戸のふちに立って、物思わしげに、釣瓶を持っている。
しきりと、何か、考えごとをしている顔つきだった。――或いは、それから四、五町奥の山林の声を、微かに、耳にとめたのかも知れぬ。
やがて、水を汲み上げて、顔を洗い出した。血でも落すように、神経質に、手を、幾度も幾度も洗っていた。
たたたたッと、犬のように迅い男の影が、附近の木蔭から走り出したと思うと、
「郁次郎ッ。御用だ」
と、うしろから締めた。
ぱッと、白い水が、五尺も高く上がった。
腰を落して、捕手を投げつけながら、手にかけていた釣瓶の水を、ざッと空へ撒いたのであった。――だが、低く、地を飛んで来た捕縄の分銅は、もう彼の右足へぐるぐるっと蛇のように粘って絡みついた。
「――郁次郎殿、郁次郎殿。もう遁れる途はありませぬぞ。貴公のためにも、お父上の老先生のご名誉の上にも、神妙に、法の捌きをうけた方が得策であろうと存ずる。卑怯なまねはなされまいぞ、其許も、江戸の名捕手塙大先輩ともいわれる人物のご子息ではないか」