Classici giapponesi con furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Leggi 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.213 caratteri · 325 schermate
眼力拝借
と、初めて吃驚したような声を聞いた。
「ざまを見ろ! 偽聾!」
彼は、自分の機智に凱歌をあげた。
男には、耳がある、声が出る。
眼力拝借
だが――東儀与力のよろこびは早すぎた。男は決して、ビクリとした様子もない。怪訝な顔をして、煙を見まわしているのみで、依然たる聾唖を守りきっているのだ。
では、あッといった声は、誰の口から出たのだろうか。
その錯覚は、次の驚きで、瞬間にケシ飛ばされた。鉄棒の嵌っている石倉の採光窓の外へ、白い女の顔が、落ッこちたように隠れた。
「やっ?」
東儀与力は、愕然として、外へ駈け出した。彼の声に、獄吏は棒をかかえて飛んで来た。だが、八方への狂奔は、雲をつかむような騒ぎに帰した。一つのお笑い事で終りを告げた。
「何か、お見違えではござらぬか。ここは、奉行所の中、ことには白昼。あんな所から、まことに婦人が覗いたとすれば、それは、狐でしょう。……なに、この辺でもまだ狐はおるので、諸侯の屋敷のお庭などには、昼でも啼いていることがままござりますからな」
と、小役人たちは、彼の渋面を慰め顔に囀った。
× × ×
ゆうべの雨で、道には、団栗や萩の花がこぼれている。