Classici giapponesi con furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Leggi 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.213 caratteri · 325 schermate
「先生ッ」
加山は、老師のふところへ、涙の顔を埋めこんで、わなわなと肩をふるわせた。
「加山、加山」
「は、はい」
「今のことばは、真実か」
加山は、老先生の心臓が、肋骨のやぶれるほど膨れているのを感じた。怒濤のように吠えている血潮の音を聞いた。
「なんで偽りを申しましょう。思えば、今日まで拙者を初めすべての人々は、ただ、老先生のこのお悲しみが見たくないために、似而非同情の心で、お訪ねもせず、お耳にも入れずに、過ぎて来たのでござります」
「では、伜は、もうとうに、江戸表へ帰っていたのか」
「はい、昨年の名月の晩――あの女笛師の死骸が見出されたその晩には、もうこの江戸表に潜伏しておられたのでござります」
「待て待てッ」
と、老先生は激越な声で、
「そちまでが、伜の郁次郎を下手人というのか」
「四面の事情、すべての証拠、一として、郁次郎殿を明るくするものはござりませぬ」
「ええ、馬鹿を言えッ、馬鹿を言えッ。わしの子だぞ! 塙江漢の生んだ子だぞ」
「ご尤もです! 誰あろう当代の名与力、塙老先生のご子息とは、私ごとき者まで、胆にこたえて、悶えてはおりましたが、すべての推移は、郁次郎殿を極悪人に決めてしまいました。