Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Leggi 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.213 caratteri · 325 schermate

Aozora Bunko

――すると、ものの三町も行かないうちに、彼は、動悸を衝つような欣びに遭遇した。

いた! 女はいた!

しかも大胆にも、かぶっている頭巾まで解いて、丸八という大きな呉服屋の暖簾の蔭に腰かけこんで、帯地か何かを見ているのである。

この女が、姿の優美なのにも似あわない不敵者だということは、真昼中、奉行所の拷問倉までしのんで来たことだけで充分に分っていたが、まさか、こうまで機変に富んで巧妙に澄ましこんでいようとは、思いのほかだった。

「ウーム、要りもしない物を出させて、わざとここで時刻をつぶしているな」

彼が、袖暖簾のかげに身をすくめて、出て来るのを待っているのも知らずに、女はやがて、頭巾に顔をくるんで、

「では明日にでも、それと、あの帯皮を、届けてくださいましね」

と、腰を上げた気ぶり。

しめた、呉服屋へはもう女の住居まで洩れている、捕まえる機会といっしょに、自白させる端緒まで揃ってしまうとは、何という恵まれた晩だろうか――と彼が欣びの笑みをもらしていると、すうと、細っそりした頭巾のうしろ姿が、眼のまえをさえぎって、およそ、十歩ばかり大通りの方へ向いて。

今だ! 夢とも知らない女。