Classici giapponesi con furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Leggi あらくれ di 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 119.451 caratteri · 236 schermate
燻みきった男女の顔が、そこここの薄暗い店屋に見られた。活気のない顔をして職工がぞろぞろ通ったり、自転車のベルが、海辺の湿っぽい空気を透して、気疎く耳に響いたりした。目に見えないような大道の白い砂が、お島の涙にぬれた目や頬に、どうかすると痛いほど吹つけた。
お島は死場所でも捜しあるいている宿なし女のように、橋の袂をぶらぶらしていたが、時々欄干にもたれて、争闘に憊れた体に気息をいれながら、ぼんやり彳んでいた。寒い汐風が、蒼い皮膚を刺すように沁透った。
やがて仄暗い夜の色が、縹渺とした水のうえに這ひろがって来た。そしてそこを離れる頃には、気分の落著いて来たお島は、腰の方にまた劇しい疼痛を感じた。
暗くなった町を通って、家へ入って行った時、店の入口で見慣れぬ老爺の姿が、お島の目についた。
お島は一言二言口を利いているうちに、それがつい二三日前に、ふっと引込まれて行くような射倖心が動いて、つい買って見る気になった或賭ものの中った報知であることが解った。
「お上さんは気象が面白いから、きっと中りますぜ」
暮をどうして越そうかと、気をいらいらさせているお島に、そんな事に明い職人が説勧めてくれた。