Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

Leggi 上杉謙信 (うえすぎけんしん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.102 caratteri · 256 schermate

Aozora Bunko

夕暮、安田の渡しとよぶ川筋へかかった。振顧ると、小一町ほどうしろに、がやがや声をあげながら野武士のかたまりが騒いでいる。笑止なことには、近づいては来ないのである。虚があったら咬みついて来ようとしている狼の群に似た。

「よいものがあります。あれへお駒を曳いて渡りましょう」

対岸へ向って、こちらの堤から、太い綱が一本張ってある。その下に繋いであった筏に馬と人は乗った。

その太綱を手繰って、筏が川の中ほどまで出たとき、うしろの堤の上にまた四、五十人の人影があらわれた。すぐ追って来た野武士たちである。

「何か吠えておりまする」

筏の上で、喜兵衛と左馬介が笑ったとき、二、三本のヘロヘロ矢が飛んで来た。鉄砲も持っているらしいが、弾が無いとみえる。ただ白い歯を剥き出している顔ばかりたくさん見える。

筏は、悠々と、岸に着く。

謙信は馬の背に移りながら、

「左馬介。その渡し綱を、斬っておけ」

と、命じた。

左馬介が、太刀を抜いて、太綱を切ると、ばしゃッと、水面を打ったそれが、大きな弧を描いて、一方へ流れた。

白い歯だの、たわしのような頭だの、大きな手の影などが、対岸の堤のうえで、再び口々に何か吠えたり、罵ったり、地だんだ踏んで躁いでいるようである。