Classici giapponesi con furigana
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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
Leggi 上杉謙信 (うえすぎけんしん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.102 caratteri · 256 schermate
わすれもの
もし謙信が、信玄同様に大事をとり常識をまもって、川中島へ出軍したとしたら、その戦前、また周囲の情勢などから判じて、到底越後上杉の名誉はあり得なかったところだった。世評は何といおうと、謙信自身にとっては、絶対な道と二なき戦法を以てしたことは快戦だったにちがいない。要するに、彼の国防も、彼の進撃も、帰するところの信念はひとつ、
――死中生アリ、生中生ナシ
の一語に尽きるものだった。
わすれもの
「伝右。伝右衛門」
信玄がふと呼び立てた。甲府へ帰還してゆく行軍の途中である。
旗本の列から、初鹿野伝右衛門が、駒を横に出して、お召しでしたかと、側へ寄りそう。
信玄はうなずいて、
「さればよ、いま思い出したぞ、戦場に忘れものして来た。さて、どうなりつらん、急に心がかりになった。急いで、そちはあとへ引っ返し、忘れものを拾うて来い」
「お忘れもの? ……。はて、何をお忘れあそばしましたか」
「いじらしいものだ。それはまだ二十歳にも足らぬ旅すがたの女子。矢弾のなかに迷うていたのを、兵に申しつけて、八幡原の社家のうちに庇うておいたぞ。はやく戻って、無事を見て来い。いや、拾うて来い」