Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
六
――実に、実に残念だが止むを得ない」
伸子は不可抗な力に釣られて、自分の心が一歩ふみ出すのを感じた。
「それとこれとは別問題よ」
「どうして? どうして別問題です? 私には全部です。――だから君になんぞわからないと云うんだ。こんなことを云い出すくらいなら、なぜ、なぜ」
佃は伸子の手をいきなりつかまえると、自分の手も一緒くたに持ちそえ、髪を滅茶滅茶にかきむしりつつ、烈しくすすりなき始めた。
「初めっから、ずっと友達のままでいなかったんだ」
六
涙でびしょびしょになった、夫の歪んで蒼白な顔、溺死人のように、額に引っかぶった髪。声。それを思い出すと、伸子は二三日たったあとでも、ひとりでにぞっとした。そして、落着かない、変な気がした。恐ろしい真実を瞥見したようにも思われ、芝居と思わない芝居を見せられたようでもあり――佃に、この懐疑の責任はあった。伸子は、男は女より、誠意をもってしか涙はこぼれないものと思いこんでいた。それを、彼が、いつぞや動坂の親達に示した感傷劇の涙で、伸子に強い感銘を与えてしまった。
翌朝、佃が、伸子の起きないうち、机の上のコップにさして行ってくれた季節はずれの桜草の花、その花からも、伸子はそれに似た感じを受けた。