Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
「でも、どうせ小石川についでがあって出ますのだそうですから……」
では、どうぞと、伸子は電話を切った。
病院は、月曜日で、特別混雑していた。控室は暑苦しくていられなかった。廊下の突き当りに一つ窓があった。そこから、裏庭の汽罐室や、その周囲の空地が見下せた。そこを、岡持を下げた若い出前持が通ったり、二の腕まで出した元気好い看護婦が時々姿を見せた。看護婦は上草履のまま、石炭殻の上を、ひょいひょいと飛び越えて斜向うの別棟の入口へ姿を消す。白い広い裾の下に赤いスリッパアの先が見えるのなど、病院らしい美しさがなくもない。そんな光景を伸子は永い間見ていた。やっと控室の人ごみの中から、左手に帳簿を持ち、伸子の馴染の看護婦が出て来た。
「――どうもおまち遠さまでした。どうぞ」
髯の薄い、いつも懶ぐさい風で患者を扱うので、伸子が嫌いな医者が、その日は当番であった。彼は伸子の挨拶に、
「や」
と鼻の先で答え、ちょいと人差指を動かした。繃帯をとけと云う合図であった。彼は指の先で、一二ヵ所、患部を押した。
「きのうの通り」
看護婦が、平手で、石膏の型でも作るように、べたべた伸子の足いっぱい膏薬を塗りこんだ。