Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate

Aozora Bunko

伸子には、佃に、自分に対する微塵の愛もないとは思えなかった。彼としての関心は、――少くとも男が自分の妻になっている女に対して抱くだけの心持は伸子に対してもあった。――それが判っていて、自分がその人情に安じられないから、伸子は悲しく苦しいのであった。

「だって――それじゃあ自分の心持はどうするの、相手が本当に愛さない、それなら、って自分の愛が急に消え切る? そう都合よく片づかないから、切ない思いをするんじゃあないの。つまり云えば誰だって相手の愛を苦しむんじゃあなくて、自分の心にある愛を苦しむ方が多いんだわ」

「じゃあお前――まだ佃を愛しているの?」

隙間風のような寂しさが伸子の心を通った。世間の、一度結婚してそれが破れ、親の家に戻った娘が一人残さず経験するだろう憂愁の源が、母親の単純な質問の中にあった。

伸子は、ほどたってから云った。

「私にはね、どうしても、普通の結婚生活がやって行けないからって、残っている好意や愛まで打殺さなけりゃならないわけは決してない気がするの。何もこれまでの夫婦がそうだったからって、真似をするには及ばないんですものね、組立てるにだって、ほぐすにだって、めいめいのやり方ってものがあっていいわ」