Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
「考えて御覧なさい」
伸子はいつの間にか、佃の腕を着物ごと抑えつけた。
「かりに女中だって、病気の主人を置いて出られるものではなくてよ。――できないことはおっしゃらない方がいいのよ」
「できないことじゃあない」
「どうして? あなたは本当に、私が悦んで云う通りにすると思っていらっしゃる? とにかく、まだ何も仰々しく云う時ではないわ。――明日津山さんをお呼びしましょう」
これは不思議な感情であった。時には殺してしまいたいと思う佃、この関係から逃れたい、逃れられたらどんなに嬉しいかと思っている伸子の心に、次第次第に悲しい歓びとでもいうようなものがさしよせて来た。彼女は静かに云った。
「――何が仕合せになるかわからなくてよ。……私どもはこの頃、ひどい貧乏人だからね――心が――だから、何だって役に立てようと思えば立つかもしれなくてよ」
佃の病気が生活の目標を変え、従って二人の心持にも変化が起り、互の生活にはからず新生面が開けまいものでもない気が、ふっと伸子にはした。少くとも、病気を癒そうという共通の目的が二人にさずかる。――
かえって、活を入れられたような心持で、伸子は椅子をずらした。