Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
亢奮のためにうっかりしていた伸子は、男の顔を仰ぎ見た。――思いがけず平野という佐々の親しい友人の一人である。伸子は平野の手を強く握った。
「――私共のところへ?」
「留守ですか?」
「ええ。――私一寸その辺へ出て見ようと思って」
「そうか、――じゃあどっちみち階下まで行きましょう」
平野はエレヴェータア・ボオイに手を振って合図した。
「しかし、こんな時独りで歩くのはよくありませんよ」
「ええ。ほんのその辺」
「その辺でも。――みな気違いになっているからね」
変にがらんとした広間では、出るにも出られないボオイたちが、気の立った眼つきで彼らを見た。
「どうします?――留守に出てお父さん心配されやしないかな」
「帳場へ伝言を頼むつもりだったんだけれど」
「――じっとしていろというのはちと無理かな」
平野はキラキラ輝く眼で伸子を見、短く笑った。
「じゃ、どうせ私も何だか落着かないから一緒に少しのして下街の様子を見て来ましょう」
彼は帳場へ伸子の鍵をあずけるついでにノートを置いて来た。
「さあこれでよし! と。今晩は一つお礼にうんとお父さんにご馳走にあずからなくちゃならないね」