Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate

Aozora Bunko

一時停滞した人波は再びのろのろ動き出す。文明を爆発させた野蛮な力が露骨に四方から迫って来て、伸子は怖ろしくなった。

「ね、どっちかへ抜けられないでしょうか、私帰りたい」

「待っていらっしゃい。――トトトト、どうもこの騒ぎだからね。さ、今のうち! 早く!」

やっと向う側の歩道へすり抜けた刹那、右手の横町から、どっと喊声があがった。

「なに? 喧嘩?」

平野は、前の男の帽子の鍔に顔をぶっつけながらのび上って見た。

「――偉いものを持ち出したぞ、カイゼルの藁人形を担いで来たんだ」

苦心して、伸子は人の間から覗いた。成程、高い竿の先に、古洋服やボール紙で作られたカイゼルが見馴れた髭を傾けて担がれて来た。胸に「地獄へ行け!」と書いた札が下っている。担ぎては、巧に竿を振り上げたり寝かしたりした。それにつれて、カイゼルは悲しげに面白可笑しい身振りをする。大喝采のうちに、人形はわっさ、わっさと辻の中央に運ばれた。

「焼いちまえ!」

「さっさと巴里へ行っとくれ」

「軍国主義を焼きすてろ!」

上気せあがり、舌がひりついたソプラノで刺すように絶叫した。

「悪魔! 私共の子をかえせ!」