Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

Leggi 光は影を (ひかりはかげを) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.262 caratteri · 276 schermate

Aozora Bunko

と、一人の若い女が、眼を丸くして双方の顔を見くらべながら叫んだ。

「話せるわ、このひと」

洋装にいくらかのおちつきをみせた女主人は、いきなり、彼の真横へ割り込み、肩へ手をおいて、しげしげと彼の眼へ、意味ありげな視線を流しこんだ。三十をもう五つ六つ越したと思われる年頃だが、その面やつれが却つてかげを深くするなまめかしさで、彼の神経を容赦なく撫でまわした。

「ちよいと、満洲は、あなたどこにいらしつたの?」

「僕か、僕は牡丹江からハイラルまでを転々とした。一番長かつたのは、ナラムト、ソ連国境に近い……」

「知つてます。ナラムトから来るロシヤ人に、しよつちゆうバタ買つてました。いゝバタでしたわ。あなた、満鉄の方……それとも、特務機関?」

「僕は単なる一兵卒さ。死にぞこないの兵隊さ。もう、そんなことどうでもいゝ。黙つて酒をついでくれ」

「満洲もわるくないけど、あんたも、いゝとこあるわ。今夜は、あたしと一緒にゆつくり飲みましようよ」

「そいつは面白い。今夜、おれも帰るとこないんだ。帰るとこあつても、帰りたくないんだ」

「帰りたくつたつて、帰しやしないわよ」

京野等志は、ぐつとウィスキイを飲み干した。