Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

Leggi 吸血鬼 (きゅうけつき) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 190.554 caratteri · 381 schermate

Aozora Bunko

彼は右手を顔の前に持って行って、近眼の様に、じっと自分の指を見ている。なぜ、そんな馬鹿馬鹿しい真似をしているのであろう。

と思う内に、彼はいきなり、気狂いの様に、その右手を振り振り、変なことを口走った。

「血、血、血だ。血が流れている」

「何をいっているのだ。怪我をしたのか」

斎藤老人が、もどかし相に尋ねた。

「そうじゃありません。誰れかが倒れているのです。身体中ベトベトに濡れているのです。血だらけです」

書生がしどろもどろに答えた。

「ナニ、血まみれの人間が倒れているというのか。誰だ。さっきの客ではないのか。早く電燈をつけ給え、何をぐずぐずしているんだ」

呶鳴りながら、気丈な老人は、もう梯子を昇り始めていた。書生もあとにつづいた。女達は梯子の下に一かたまりになって、青ざめた顔を見交わしながら、押黙っていた。

老人と書生とが、窓をまたぎ越した時には、既に電燈が点じられ、室内の恐ろしい有様が、一目で分った。

故畑柳氏は、骨董ずきで、書斎にも古い仏像などを置き並べていたが、氏の没後も、それが皆そのままになっている。

両手を拡げて立ちはだかっている、真黒な、どこの仏様ともえたいの知れぬ、奇怪な仏像の足元に、一人の洋服男が、血まみれになっていた。