Classici giapponesi con furigana
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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Leggi 新・水滸伝 (しん・すいこでん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 684.899 caratteri · 1374 schermate
「えっ。あの虎退治をやった弟の武松が、もう程なく帰る時分なのか。こいつあ、なんとか今のうちに」
と、さすが穏やかならぬ風もある。
「旦那え……」と、婆はその耳へ顔を寄せて「もう待てやしませんよ、なんとか、ここでご思案をきめなくては」
「といったって、おれの身じゃ、金蓮と手に手をとって道行きということも出来やしないよ」
「ですからさ、きのうもちょっと、お耳に入れたじゃありませんか。旦那のおたくは薬種問屋、砒霜なんかもおありでしょう」
「あ、あれか」
「毒をくらわば皿までとか。一服そっと、金蓮さんにお預けなさりゃあ、なあに惚れた旦那のためですもの。きっとうまくやりますよ」
ここに、恐るべき相談が、金蓮も加えて、三人のあいだに成りたっていた。知らないのは、武大だけである。いや、ろくな食餌も医薬も与えられているではなし、武大は青黒く眼を落ち窪ませ、意識もすでに普通ではない。
「……あなた、何か美味しい物でも喰べないこと。……ねえ。仰っしゃって下さいよ。わたし、つくづく悪かったわ」
或る日彼女は、良人の枕もとに顔をよせて、さめざめと泣いてみせた。
「ねえ、あんた、ゆるして……」