Classici giapponesi con furigana
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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Leggi 新・水滸伝 (しん・すいこでん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 684.899 caratteri · 1374 schermate
女には男扱いされぬ君子も、山野の侠児には恋い慕われる事
こんな愉しい晩ってないわ」
彼女のいずれへいうともない独り言へ、客の張三は如才なく相槌を打って、
「お部屋を見ますと、ご夫人はいろんな楽器をお持ちですな。音楽はお好きですか」
「ま、いやですわ、ご夫人だなんて」
「じゃあ、婆惜嬢さま」
「ホホホホ、お嬢さんでもないわね私は。……でも、その小嬢だった頃、わたし開封の都で育ったでしょ。そして近所が色街でしたからね、しぜん稽古事は、ずいぶん仕込まれてきたんですって」
「ひと事みたいに仰っしゃるけれど、それじゃあずいぶんお上手なんでしょう。どうです、てまえが笛を吹きますが、ひとつ胡弓をお弾きになりませんか」
「そして、何を奏るの」
「その東京で一ト頃流行った開封竹枝でも」
「開封竹枝、ああなつかしいこと。奏るわ、久しぶりに。……お母さんも、旦那へお酌でもしながら、そこで聴いててよ」
二人は、笛と胡弓を合奏せて、ひとしきり他愛もなく陶酔していた。婆惜が愉しそうであれば宋江の心も愉しむ。妾宅の旦那でこそあれ、いわゆる世の旦那型ではない、彼の君子人的な性質は、女を持っても酒を飲んでも根ッから常日頃の――及時雨、宋公明の人柄をちっともくずす風がない。