Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
「これかね。どうして、お前、此方の着物を着た時の羽織さ。ね、――この羽織で結構」
「でも何だかそれじゃ好笑いわ。それを御着なさる位なら、まだ今までの方が好のですもの」
御客様は茶の平打の紐を結んで、火鉢の前にべたりと坐って御覧なさいました。急に、ついと立ってまたその御羽織を脱ぎ捨てながら、
「それじゃ、これだ――もともとだ。アハハハハハハ」
奥様がそれを引寄せて、御畳みなさるところを、御客様は銜煙管で眺入って、もとの御包に御納いなさるまで、熟と視ていらっしゃいました。思いついたように、
「ハハハハ、婆さん紋付なんか入れてよこした」
こういう罪もない御話を睦まじそうになすっていらっしゃるところへ、旦那様も御用を片付けて、御二階から下りておいでなさいました。見る見る旦那様の下唇には嫉いという御色が顕れました。御客様は急き立てて、
「さあ、出掛けましょう。もう三十分で汽車が出ますよ」
御二人とも厚い外套を召して御出掛になりました。爺さんも御荷物を提げて、停車場まで随いて参りました。後で、取散かった物を片付けますと、御部屋の内は煙草の烟ですこし噎せる位。がらりと障子を開けて、御客様の蒲団や、掻巻や、男臭い御寝衣などを縁へ乾しました。