Classici giapponesi con furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Leggi 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 209.260 caratteri · 418 schermate
「そこの瓶掛に、湯がわいておるか」
「沸りかけております」
「茶を入れい」
「はい」
馴れない手で茶を汲んでさし出した。老公はいつもと変らない朝の顔である。しずかに苦茗をすすって、
「文八、これが分るか」
と、机のうえの詩稿を出して見せた。
文八は、口のうちでいちど読んでから、低声で誦した。
忙裏山看我
閑中我看山
相看相不似
忙総不及閑
老公はうなずいて、
「その通りじゃ。……山に対してふと思いおこしたのじゃ。わしの詩ではないが……誰でもよい。よい詩であろ」
「はい」
と、いったが、文八には、十分わかっていないようだった。
ゆうべのはなしなど、少しもないのである。老公はまた、もう一詩を示して、
「ちと思うことがあるから、きょうは終日、たれにも会いたくない。そちは、なるべく門にいて、客を謝す役にあたれ、もし、たって訪問を強請するものが来たら、この詩を示してやれ」
それを見ると、これも老公の作ではないらしいが、こんな明人の詩がかいてあった。
吏事君、怪シムヲ休メヨ
山城、門ヲ閉ズルヲ好ムヲ
コノ山、長物ナシ
唯、野ニ清鶯アルノミ
「貼っておきましょうか」
文八が伺うと、いいとも、いけないともいわず、老公はまた、窓から見える彼方の山と対していた。