Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いきふどう

橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇

橘 外男

Leggi 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.400 caratteri · 387 schermate

Aozora Bunko

停車場から博士の屋敷までは小一時間くらいの道のりで、もうそのじぶんには、いりあいの鐘がちかくの寺からなりひびいて、町には灯がはいっていました。

きのういらい、この地方特有の南風がはげしくふきまくっているせいか、町の商店は大戸をおろして、往来には人影ひとつ見えません。

そのひっそりとした夕方の田舎道を、くるまに母衣をおろして走るうちに、いつか町もぬけて、村の入口の石橋をわたると、もうあたりは収穫のすんだ、ひろい一面のたんぼになっています。

そしてくるまの進みがだいぶおそくなって、吉蔵のはく息が、ハァハァと苦しげになってきたのは、屋敷へのぼるだらだら坂へかかってきたからなのでしょう。

この坂さえのぼりきってしまえば、山茶花屋敷は目と鼻のさきなのです。と、そのとたんに、

「あッ!」

と、いきなり吉蔵が梶棒をとめました。

「ど、どうした! 吉蔵!」

「だ、だんなさま! た、たいへんなものが飛んで!」

「とんだ? なにが?」

「ひ、人魂が……と、飛んでいきやしたが……」

「バカ! あんなものは、人魂じゃない! ばかなことをいわずに、早くやってくれ!」

もちろん、博士も、いま、くらい空に光をはなって、ながい尾をひきながら、右手のやぶかげの墓場へ消えてゆくものを見ました。