Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いきふどう

橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇

橘 外男

Leggi 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.400 caratteri · 387 schermate

Aozora Bunko

五

夏外套の襟を立てて、竦められるだけ首を竦めた私の眼前に、今にもまたサヤサヤと青萱を分ける音が響いて来てあの蝋のような顔色が朦朧と泛び出そうな気持がして、私はいっしょに歩いている亭主にしがみ付きたいような気持がした。

「おや! どうなされました? 旦那様!」とふと振り返った亭主が眉を顰めて立ち止まった。

「どこかお加減でも! たいそう蒼い顔をなすって!」

蒼い顔をしていたか怖い顔をしていたか、それは自分にはわからなかったが、私はその時心の中でもうこんな淋しい逗子の一人住いを切り上げて、明日中に明るい灯の輝いている東京へ引き揚げてしまおうと決心していた。そしてそれより先に明日のことはともかくもどういうふうにこの亭主に頼んで、今夜一緒の部屋に寝てもらおうかとしきりにそれを苦にしていたのであった。

五

亭主に言うのが憚られたばっかりに、とうとういつもの通り私は一人で自分の部屋に寝たが、その夜ほど私にとって朝の太陽の待ち遠しい気持というものはおそらくなかったことであろう。ただもう朝の訪れが、雨戸の隙間から射し込んで来るのばかりを、一刻千秋の思いで待ち切っていたのであった。