Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Leggi 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.213 caratteri · 325 schermate

Aozora Bunko

「お江戸だそうでございますね」

「江戸です」

「私も……」

と、言いかけたが、巫女の直美は、急に、悲しそうに、

「七歳の時に、覚えたきりです」

「そんな幼少からこの江の島に?」

「え、巫女に貰われてまいりました」

「孤児かの」

「舞を舞っている間にも、それを思うと……」

涙が目にいっぱいだった。

「直美、直美――」

拝殿の方で、禰宜の呼ぶ声がした。

彼女が、顔いろを改めると、涙がぱらぱらと落ちた。

「はあい」

と、返辞をしてまた、

「お客様、晩に、江戸のお話をうかがいに行ってもようござりますか」

「え。おいでなさい」

「じゃ、きっと、参りまする」

また呼ばれたので、彼女は、あわてて走りかけたが、胸に挟んでいた檜扇が落ちたので、戻って、拾いかけた。

「あっ」

と、何を見て驚いたのか、郁次郎は、発作症でも起きたように、いきなり、彼女のその左の手をつかんだ。

「……いけません、人が見ます」

直美は、耳まで紅くなった。彼女がひそかに抱いていた恋心は、それを、自分の都合のよいように勘ちがいしていた。

が――郁次郎の眸は、それに、燃えているのではなかった。恋ではなかった。

彼女の左手の中指である!